2015.11.9 剣鉈を20年振りに出して見た

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20年程前に地元堺の刃物屋で作ってもらった剣鉈
7寸両刃
ATS-34
鹿角ハンドル

出してみたものの使う用途が今のところ思い付かない。
この手の剣鉈はハンターや源流釣り師以外果たして使い道があるのか?というスタンス。
故に山仕事では今まで使った事は無い。
当方ハンターでもなく山師なので常用しているのは通常の鉈。
剣鉈を常用するのはかなり無理があり突き刺す用途が無い。
又、剣鉈と腰鉈とでは重心位置が異なり剣鉈はヒルトあたりを中心に腰鉈は完全なトップヘビー。
叩き切る用途で重心が中心にあると力が加わらない。
又、重量も相対的に剣鉈は軽い。故に余計に力が要る。
使う頻度にもよるが自分のようにほぼ一日中使うとなると極力無駄な力を使いたく無い。
そうなるとどうしても腰鉈という選択になる。

熊や猪の来襲に備えて‥‥といっても鉈を2本も持って行くのはバカらしい。
ましてや非常用としてザックに忍ばせるのはナンセンス。
そもそも興奮して突進して来るイノシシを退治するのはほぼ不可能。
東北の山奥ならまだしも関西の山では猪は勿論いるが熊はほとんど聞いたことが無い。
護摩龍神あたりはいそうな気がするが)
腰には泊鉈を常備しているので収まる所が無い。
万一イノシシが襲ってきたら鉈のトンビ部で頭をガツンとやり追い払う予定。
トドメを刺す必要など無いのでわざわざ剣鉈を別に持っていく事など無い。

写真の鉈は当時学生のなけなしのバイト代を注ぎ込んで6万近かったと思う。
しかしこのATS34というステンレス鋼材は厄介だ。
キング砥石等の従来の水砥石では全く歯が立たない。
アホみたいに硬すぎて話にならん。
何倍も時間をかけても砥石が削れるだけで刃は研げていない。
手持ちの砥石は通常の和鋼向けなので完全に砥石が負けている。
高級ナイフの世界ではメジャーな鋼材かも知れんが何という硬さ。
こんな鋼材今なら絶対に選ばないが若気の無知故に当時は疑問に思う事なく選んでしまった。
というか店の主の言われるがままにそれにして、となった。
飾りならば話は別だが研ぐ頻度が高い鉈は絶対的に安来鋼と軟鉄の鍛接で無いと駄目。
如何に研ぎやすいかというポイントは非常に重要。
研ぎに難儀するもので果たして最高の状態で仕事に挑めるだろうか?
そらセラミックの硬度が非常に高い砥石を買い揃えれば良いだろうがこれだけの為に買うのも馬鹿らしい。
全くもって一般的では無い実用度の低い鋼材だ。
第一近隣のホムセや金物屋でセラミックの砥石なんかなかなかおいてないぞ。
アホらしくなってきたので研ぐのを一旦中止した。
セラミック砥石を買わないとこりゃ無理だ、と判断。
下記にて結局セラミック砥石を購入

当時は白神山地の核心部に1週間ほどかけて入山していた。
(役場への許可申請も勿論済ませている)
その御守りとして買ったものだ。
大阪から18切符で乗り継いで行ったのを覚えている。
その帰りに秋田の西根さんがその当時はご健在だったので作業場に立ち寄り8寸袋ナガサを
を手に入れた。
実用性はナガサの方が断然良かったと思う。
片刃で食い込みが良く研ぎやすく切れ味は文句無し。
ただしそれは剣鉈どうしで見た場合で通常の腰鉈的な用途から見るとやはり使いやすいとは言えない。
結局その後は剣鉈というものは山で使った覚えがない。
そもそも登山目的では全く必要の無いものだった。


話は戻って西根さんの剣鉈だが、鋭く尖った切っ先は生半可な心構えじゃ持てない。
その3ヶ月後にお亡くなりになり大変貴重なナガサとなったのですが今は山仲間の手に譲ってしまった。
結局山仕事で使える鉈は普通の腰鉈か現在愛用しているの泊鉈になる。

時は流れて現在は趣味では無く生業として山仕事をしている。
山仕事では鉈は必需品。毎日腰鉈を使っている。
滅多に人が来ない所に作業場があるのでイノシシ シカの楽園状態。
よくイノシシの荒い息遣いが間近で聞こえるが(昼間でも活発に山では動きまくってる)これまで特に被害は無いので悠長に構えてますがやられてから後悔するかも知れません。
何度も間近で対峙しているが幸い突進された事はない。
手や声で大きな音を出しても全く我関せずという様子。
鉈等の刃物類を何も持っていないとしてイノシシのいる山に入らねばならないとしたら剣鉈という選択肢も有りだろう。
その効果の程は置いといて丸腰で一方的に攻撃される事を思えば刺し違える覚悟でやられる方がマシだ。
しかし罠にかかったのを仕留めるのとは訳が違う。
無理と分かっていてもじゃ丸腰でという気持ちには普通なれないだろうと思う。
勝算は薄いがこっちが降参しても相手さんは待った無しだろう。
そんな呑気な事を言ってられる状況じゃ無いだろうけど。
なので丸腰でそういう山に入るくらいなら持っていけという考え方。

実用的な腰鉈と滅多に使わない剣鉈
両方を兼ね備えた鉈などあるわけ無いので結局は実用面を重視してしまう。
ナガサであっても普通の剣鉈よりかはマシというレベルで山仕事メインで考えると腰鉈以外考えられん。
余興的に1回ナガサ1本にして実際に山仕事が可能か試してみようかとも思うが‥‥。

◯補足 研ぎ その後


あまりに硬すぎて研げないのでしばらく放っておいたがふと思い出して研ぐことにした。
台風で山に出られないので暇に任せてセラミック砥石を買ってきた。
シャプトンM5シリーズ
#180 #1000 #2000の3種
セラミック砥石という事で硬度が高い。
ステンレス系の刃物でも研げるらしい。
なぜ刃の黒幕で無くてM5なのか?については単に近くのホムセにこれしか無かったから。
そこで今回上記のATS34の鉈で試したところ普通に研げるではないか?
カエリが少々取りにくいかな?とも思ったがこれは鋼材の特性だろう。
しかしこの砥石でステンレスを研ぐと一体今までの苦労は何だったんだ?というくらい研げる。
本来は#5000まで研ぎたかったがホムセに売ってなかった。
#2000でも鉈としては十分な刃が付く。
ナイフ的な使い方ではやっぱりもっと細かい番手は必要だが。
ともあれ水砥石で研げない鉈を再度押し入れ行きにする所だったがこれで一応使える状態にはなった。

あとはせっかく研いだこの鉈をいつ使うか?が問題だ。